お気に入りのソファを選び、SNSで何度も見返した理想の家具を揃え、カーテンやラグの色も慎重に合わせたはず。それなのに、いざ部屋を眺めてみると「なぜか、しっくりこない」「なんだか物足りない」と感じることはありませんか?
「自分のセンスが足りないのかも……」と、諦める必要はありません。
実は、インテリアが「しっくりこない」という悩みは、家具の良し悪しやセンスの有無ではなく、空間の捉え方がほんの少しズレているだけのことがほとんどなのです。
今回は、インテリアや家具が好きだからこそ陥りやすい「空間の落とし穴」を紐解きながら、お部屋を心地よく整えるために見直したい3つのポイントをご紹介します。
「センス」の問題ではありません
「部屋がなんか違う」と感じるとき、私たちはつい新しい雑貨を買い足したり、家具を買い替えたりしたくなるものです。しかし、要素を増やしても違和感が解消されない場合、問題は「モノ」ではなく「空間のバランス」にあるかもしれません。
美しいと感じる空間には、必ずと言っていいほど「視線の導線」と「情報の密度」が計算されています。プロのインテリアコーディネーターが手がける空間が整って見えるのは、特別な魔法を使っているからではなく、共通した「視点」を持っているからです。
その視点を知るだけで、今ある家具を活かしたまま、お部屋の空気感をガラリと変えることができます。
見直したいポイント①:空間のバランス(床・壁・天井)
お部屋を構成する要素は、大きく分けて「床」「壁」「天井」の3つです。
多くの場合、インテリアにこだわる方は「床」に置くもの(ソファ、テーブル、ラグなど)に全神経を集中させがちです。しかし、実は部屋に入ったときに目に入る面積の大部分を占めているのは「壁」です。
「床」にばかり素敵な家具や情報が集中し、「壁」や「天井」が真っ白なまま放置されていると、空間の重心が下に偏りすぎてしまい、どっしりとした安定感を通り越して、どこか「未完成」な印象を与えてしまうのです。
- 床:家具やラグによる「重み」
- 壁:視線を受け止める「彩り」
- 天井:開放感を生む「抜け」
この3つのバランスを意識してみましょう。もし「部屋がしっくりこない」と感じるなら、一度視線を上げ、壁面という広大なスペースが手付かずになっていないか確認してみてください。
見直したいポイント②:視線の行き場(視線が落ち着く場所があるか)
インテリアにおける「視線」の動きは、その部屋での過ごしやすさに直結します。
お部屋に入った瞬間、あなたの視線はどこに向かいますか?
もし、視線がどこにも留まらずに泳いでしまったり、逆に部屋のあちこちに散らばった小物に視線が分散してしまったりすると、脳は「落ち着かない空間だ」と判断してしまいます。
これを解消するのが「フォーカルポイント(注視点)」という考え方です。
部屋の中に、パッと目を引く「視線が落ち着く場所」を一つだけ作ってみてください。それは、お気に入りの椅子でも、美しい木目のチェストでも構いません。
大切なのは、その場所を「主役」として引き立てること。視線の行き場が決まると、不思議なことに部屋全体のバラバラだった要素が、その主役を中心にまとまり始め、空間にリズムが生まれます。インテリアが物足りないと感じるのは、もしかすると「視線を受け止める準備」ができていないからかもしれません。
見直したいポイント③:余白と情報量(詰めすぎ・何もなさすぎ)
最後に見直したいのは、「情報の密度」です。
ミニマリズムのように何もない空間は清々しいものですが、あまりに余白が多すぎると、今度は空間が「冷たく」感じられたり、広さが「虚無感」に繋がったりすることがあります。反対に、好きなものを詰め込みすぎると、情報が過多になり、リラックスできるはずの場所がノイズに溢れてしまいます。
ここでも鍵となるのは、やはり「壁」の使い方です。
何もない真っ白な壁は、一見すると究極の余白に見えますが、実は「何を映していいかわからない空白」でもあります。そこにほんの少し、素材感のあるものや、奥行きを感じさせる要素を加えるだけで、その周辺にある「何もない余白」が、意味のある「贅沢な空間」へと変化します。
「詰め込む」のではなく、「適切な場所に、適切な情報量を置く」。この微調整が、空間の質感をぐっと引き上げてくれるのです。
壁に「要素」があることで、空間は整い始める
3つのポイントを振り返ってみると、すべてに共通しているのが「壁という存在をどう扱うか」ということです。
家具を新調しなくても、今の配置のままでも、壁に少しの「変化」を加えるだけで、空間のバランスは劇的に改善されます。それは、壁を単なる仕切りとしてではなく、「空間を整えるためのキャンバス」として捉え直す作業です。
「壁を飾る」と聞くと、少しハードルが高く感じるかもしれません。「壁に穴を開けられない」「どんなものを飾ればいいかわからない」という不安もあるでしょう。
しかし、今の時代、大がかりな工事をしなくても、壁を傷つけずに、それでいて職人の手仕事や素材の温もりを感じられる要素を取り入れる方法はたくさんあります。
もし今、あなたのお部屋が「なんか違う」と感じているなら。まずは、その真っ白な壁をじっと眺めてみてください。
そこが、あなたの理想の暮らしを完成させるための、最後の一節(ピース)になるかもしれません。